RFIDの歴史と現状

四半世紀前に欧米でスタート

RFID(Radio Frequency Identification)は、誘導電磁界または電波によって非接触で半導体メモリーのデータを読み出しと書き込みのために近距離通信を行うものの総称であると定義されている。学術的および国際的には、RFID(無線認識)であるが、日本では、かつてはデータキャリアと呼び、今ではRFタグ、無線タグ、電子タグ、ICタグ、トランスポンダ等と呼ばれている。

RFIDは、1980年頃に電子的なメモリーを非接触で更新する技術として欧米で始まった比較的に古い技術である。日本でも1985年頃から製品化や応用技術の研究が開始され、1987年には、エーアイエムジャパン(現 社団法人自動認識システム協会)主催によるデータキャリアセミナーが開催されている。その後、1990年には、エーアイエムジャパンが編集した本「データキャリア技術と応用」が日刊工業新聞社から発刊されている。そして、RFIDの持つ大きな可能性から1990年代の初めに大きなブームとなったが、バッテリー内蔵で、タグが大きく、複数同時読取ができないこと、また、タグ価格が1000円以上であることから事業化できず、1995年頃には多くの企業が撤退していった。

技術の進歩で再び注目

それから10年経って、技術が大きく進歩し再び注目を集めることになった。バッテリーレスや集積度向上による小型化と複数同時読取を実現し、価格的にも100円以下の見通しが立ったことによる。また、1998年からISOとIECが共同でRFIDの標準化に動き出したことも今日の大きなブレイクに繋がっている。というのは、RFIDは、チップが異なると読み書きできないという標準化の遅れが普及の阻害要因になっていたからである。

1999年、NTTは、公衆電話に電磁誘導による密着型の非接触ICカード(RFカード)を導入し、続いて、2001年、JR東日本は、電波を利用した近接型のRFIDであるSuica定期券を導入した。そして、2003年、住民基本台帳カードに利用されるなど非接触ICカードは着実に普及してきている。非接触ICカードは、非接触で読み書きできる利便性と高いセキュリティ性があり、また、繰り返し利用できることから、価格が普及の阻害要因になっていない。したがって、今後も着実に広く普及していくと思われる。

バーコードの置き換えは不毛の競争

一方、物に利用するRFタグは、非接触ICカード(RFカード)のように順調に普及していない。ユビキタス社会の到来と、自動チェックアウト、自動入出庫管理、トレーサビリティ、リサイクル、盗難防止、模倣品防止、消費動向調査、資産管理などの要求から、様々な実証実験が行われているが、何れも実用段階に至っていない。着実に普及しつつあるのは、価格があまり問題にならない図書管理くらいであり、それ以外は、技術問題と価格問題と新たに生じたセキュリティ問題があるからである。

経済産業省は、価格問題を解決するために5円タグを開発する響プロジェクトを実施したが、生産量が1億個にならないかぎりその価格は実現しない。しかも、5円の基準は、タグとアンテナをフィルムに取り付けたインレイ(インレットともいう)の価格であり、ラベルにするためには更に紙や粘着剤などの加工が必要である。したがって、ラベルベースでは、10円から20円の価格になるので、それが実現してもバーコードに比べまだ高価であるので、普及の決定打にはなりにくい。

また、物流で注目されている850MHz~960MHzのUHF帯は、日、米、欧で周波数が異なるために技術的課題を抱えている。また、まだこの帯域が使用できない国や地域があるので、国際的な普及にはまだまだ時間が必要である。したがって、現状では、最も安価で確実に認識できるバーコードインフラを活かしながらアプリケーションによってRFIDを付加し、その価値に見合った価格で提供をすることを目標にすべきであると思う。コストダウンを狙ってバーコードの置き換えを目指すことは、バーコードより高価だから使えないという結果に至るだけで不毛の競争である。

バーコードとの共存が最善のソリューション

そもそも自動認識技術は、目視による入力ミスと入力速度向上を目指して開発されたもので、バーコードは、バーの組み合わせでコード化するというシンプルな技術であるため、パッケージやラベルに簡単に付加することができた。そして、万一バーコードが読めない場合でも、目視読取でリカバーできるフェールセイフのシステムとなっている。

RFIDは、バーコードより小さいメディアであり、リードライトや複数同時読取などの優れた機能を持つ技術であるが、フェールセイフの視点では、万一のためにバーコードシンボルまたは目視文字は不可欠であると思う。もし、印刷スペースがないのであれば、2次元シンボルを印刷しておくべきである。

つまり、商品管理や物流管理のように人が介在するシステムである限り、文字やバーコードは有効な入力手段であり、RFIDは、これらとの共存を模索することが現実的なソリューションであると考える。バーコードにRFタグが付加することにより、データ入力の効率化、所在管理の実現、盗難防止等が可能になるのであれば、多くのユーザはその価値に相当する価格アップを認めてくれるのではないだろうか。

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高付加価値に期待するRFID

Suicaなどの交通カードでは、デポジットではあるが500円コストをユーザが負担しているにもかかわらず、無料の磁気カードから急速にシフトしている。そして、若い人ばかりでなくお年寄りまで広く普及しているのは、そのコスト以上の利便性があるからである。また、バーコードや磁気カードでは、実現できないRFIDの特長を活かし、それをユーザが理解しているからである。

これは、RFIDの将来を考える上で非常に重要なことである。単に価格競争するのではなく、価値あるアプリケーションを開発することこそが、RFIDの普及に繋がることを意味している。図書館で蔵書管理にRFIDを利用しているのも、お客様サービスと省力化の両方が実現できるからである。具体的には、ユーザは、自分で10冊くらいまで一括読取して貸し借りができる。また、図書館は、ユーザの勝手な持ち出しを管理でき、棚卸時間を大幅に短縮できる。

RFIDの高付加価値化は、現在、アクティブタグで行われている。アクティブタグとは、バッテリーを内蔵しているので、従来のパッシブタグに比べ、サイズは大きく、価格も数千円レベルまで高くなる。しかし、通信距離が数十メートルあるので、人や物の所在管理に最適である。数十メートルの読取距離は、他の自動認識技術では実現できないので、RFIDへの期待は大きい。

また、アクティブタグに温度センサーや湿度センサーを付加したセンサータグが注目されている。価格は、数千円から1万円近くまで高価になるが、食品の品質管理では有効性が高い。また、センサータグをリストバンドにすれば、体温センサーとして患者の異常管理にも利用できる。このように、RFIDは、価格競争路線から高付加価値路線に活路を見出そうとしている。

 

 

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