概要
2006年9月に厚生労働省医薬食品局安全対策課より発出された「医療用医薬品へのバーコード表示の実施について」について、日本製薬団体連合会(日薬連)が、コード表示方法等具体的な導入方法及び留意事項等を取り纏め、2006年11月1日に「医療用医薬品新コード表示ガイドライン」を発刊した。その後、2012年6月に「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項の一部改正について」が発出され、更に、2016年9月に「表示項目や表示方法が変更された。そして、2019年12月に「医薬品、医療機器または再生医療等製品を特定するための符号の容器への表示」が公布された。
表示項目
本ガイドラインでは、下表のようにバーコードの表示項目を定義している。表示方法は、特定生物由来製品、生物由来製品及び注射薬について規定したものである。
下表において、◎は必ず表示する必須表示項目、〇は必ずしも表示しなくても差し支えない任意表示項目を示している。また、実施時期は、Aが2008年9月以降、Bが2015年7月以降、A’は、2008年9月時点では任意表示となった。その後、2016年の改定により、◎*は、2021年4月以降必須となった。
(1) 調剤包装単位
調剤包装単位とは、製造販売業者が製造販売する最小の包装単位を言い、使用単位、最小包装単位とも言う。例えば、錠剤、カプセル剤であればPTPシートやバラ包装の瓶であり、注射剤であればアンプルやバイアルなどである。
調剤包装単位の表意項目
医療用医薬品の種類 |
実施時期 |
商品コード |
有効期限 |
製造番号 |
特定生物由来製品 |
A |
◎ |
◎ |
◎ |
生物由来製品(特定生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
〇 |
〇 |
注射薬(生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
〇 |
〇 |
内用薬(生物由来製品を除く) |
B |
◎ |
〇 |
〇 |
外用薬(生物由来製品を除く) |
B |
◎ |
〇 |
〇 |
(2) 販売包装単位
販売包装単位とは、通常、卸売販売業者等から医療機関等に販売される包装単位を言い、最小注文単位とも言う。例えば、錠剤、カプセル剤であれば調剤包装単位であるPTPシートが100枚入りの箱であり、注射剤であれば10アンプル入りの箱などである。
販売包装単位の表示項目
医療用医薬品の種類 |
実施時期 |
商品コード |
有効期限 |
製造番号 |
特定生物由来製品 |
A |
◎ |
◎ |
◎ |
生物由来製品(特定生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
◎ |
◎ |
注射薬(生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
◎* |
◎* |
内用薬(生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
◎* |
◎* |
外用薬(生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
◎* |
◎* |
(3)元梱包装単位
元梱包単位とは、製造販売業者で販売包装単位を梱包した包装単位をいう。例えば、販売包装単位である箱が、10箱入った段ボール箱などである。元梱包装とは、開封されていない状態を指し、販売包装単位が規定数量に満たない、いわゆる端数及び詰め合わせの輸送箱は含んでいない。
元梱包単位の表示項目
医療用医薬品の種類 |
実施時期 |
商品コード |
有効期限 |
製造番号 |
数量 |
特定生物由来製品 |
A |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
生物由来製品(特定生物由来製品を除く) |
A |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
注射薬(生物由来製品を除く) |
A' |
◎* |
◎* |
◎* |
◎* |
内用薬(生物由来製品を除く) |
A' |
◎* |
◎* |
◎* |
◎* |
外用薬(生物由来製品を除く) |
A' |
◎* |
◎* |
◎* |
◎* |
コード体系
本ガイドラインでは、ISO 15418規格で定義されたアプリケーション識別子(Application Identifier、AIと略す)を用い、固定情報(商品コード)に付帯した変動情報を任意に一元化し運用できるGS1コード体系を採用した。
(1) アプリケーション識別子及び表示順列
本ガイドラインで使用されているアプリケーション識別子、及びその表示順列は以下のように定義されている。有効期限、数量、製造番号は、商品特性に合わせて必要な項目を表示する。
情報 |
: |
商品コード |
有効期限 |
数量 |
製造番号 |
(2) 商品コード
商品コードは、GTINの14桁を採用している。パッケージインジケータ(PI)は、調剤包装単位“0”、販売包装単位“1”、元梱包装単位“2”と規定している。”3”以降は、予備として確保されており、ユーザが勝手に使用することはできない。
元梱包装のJANコードは、販売包装と同一の商品コードとする。しかし、調剤包装単位のJANコードは、販売包装単位とは異なるJANコードとする。これは、調剤包装にある複数のパッケージを識別するためである。
また、JANコードは、販売を行う会社ごとに付番する。ただし、麻薬製品及び医療用ガスについては、製造販売を行う会社ごとに付番する。
PI 4 9 M3 M4 M5 M6 M7 P1 P2 P3 P4 P5 C/D
商品コード(JAN)
PI 4 5 M3 M4 M5 M6 M7 M8 M9 P1 P2 P3 C/D
商品コード(JAN)
(3) 有効期限
有効期限は、ISOフォーマットにしたがってYY/MM/DDで表示する。YYは、西暦の下2桁で表し、MMは、月を01~12の2桁で表す。DDは、日付を2桁で表すが、日付不要の場合は、「DD」に「00」をセットすることになっている。
(4) 数量表示
数量は、数字8桁以下で表示し、8桁未満の場合、先頭を“0”で埋めずに数値を表示する。調剤包装単位と販売包装単位は、数量が“1”なので、表示する必要がない。元梱包装単位は、販売包装単位の入り数を表示する。
(5) 表示例
商品コード、有効期限、製造番号、入り数を表示する場合のデータ例は、次のとおりである。JANコードのチェックデジットC/Dは、梱包インジケータを含めて再計算することによりc/dとなる。日付のない有効期限は、00で表示する。
JANコード | 49 87123 11111 C/D |
有効期限 | 2007年1月 |
製造番号 | AB12345 |
元梱入り数 | 20 |
調剤包装単位
(01) 0 4987123 00000 c/d (17) 070100 (10) AB12345
販売包装単位
(01) 1 4987123 11111 c/d (17) 070100 (10) AB12345
元梱包装単位
(01) 2 4987123 11111 c/d (17) 070100 (30) 20 (10) AB12345
バーコードシンボル
(1) シンボルの種類
スペース的に余裕のある元梱包装単位は、商品コード、有効期限、数量、製造番号の情報をGS1-128で表示する。販売包装単位、調剤包装単位については、商品コードをGS1 Databar Limited (RSS Limited)で表示し、表示スペースなどの都合でこれが表示できない場合は、GS1 Databar Stacked (RSS-14 Stacked)で表示する。それでも表示できない場合は、モジュールサイズを下げて表示する。また、製造番号や有効期限などの変動情報は、2次元シンボルのMicro PDF417を使用したGS1合成シンボルComposite Component-A(CC-A)で表示する。
単位 | 商品コード GTIN |
製造番号、有効期限、 数量(元梱包のみ) |
留意点 |
調剤包装単位 | GS1 Databar Limited または GS1 Databar Stacked |
GS1 Composite (CC-A) (Micro PDF417) |
原則としてGS1 Databar Limitedで表示。 |
販売包装単位 | |||
元梱包単位 | GS1-128 | 商品コード、製造番号、有効期限、数量を表示。 表示幅が100mmを超える場合は、原則2段で表示。 |
(2) モジュールサイズ
モジュール幅は、バーコード表示の再現性とバーコードリーダでの読取性を考慮し、0.25mmを推奨する。但し、印字幅が不足する場合は、0.17mmまで小さくすることができるが、できる限り大きいモジュール幅を選択する。GS1 Databar Limited (RSS Limited)は、ISO/IEC-24724 改訂によりモジュール構成が変更され、最小サイズが10×79モジュールになった。
10×79モジュール 13×50モジュール
(2) 目視文字
バーコードシンボルに含まれている全ての情報を、目視文字(ヒューマンリーダブル)表示することを推奨している。但し、10ml以下のアンプル、または、これと同等の大きさの直接容器・被包においては、「有効期限」及び「製造番号」として別途当該記載がある場合に限り、商品コード以外の目視文字表示を省略することができる。その中で、特に薬事法上の表示の特例に該当する2ml以下のアンプル、または、これと同等の大きさの直接容器・被包は、「有効期限」及び「製造番号」として別途当該記載がある場合、商品コードのみ目視文字表示し、他を省略することできることになった。
(3) マーキング方法
バーコードシンボルのマーキングは、個々の包装ラインの環境やスピードにも対応できるよう熱転写プリンタやレーザマーカを想定している。当初に表示ガイドラインでは、レーザマーカによる反転シンボル(ネガシンボル)も許容されていたが、未対応のスキャナが多数あったことから、シンボルの前後に余白をマーキングして通常シンボル(ポジシンボル)で表示することに改定された。
商品コードのみの表示であれば、包装する前にプレ印刷が可能である。一方、製造現場でオンサイトマーキングする場合は、個々のラインの環境や速度に対応してインライン印刷、熱転写プリンタ、レーザマーカ等で表示する。